ムラセの日記

安定に不安定な文章。

つまり今、携帯使えないのです。

長野駅に着いて電車から降り、階段を登っている時に携帯を電車に忘れた事に気が付いた。
小走りで引き返したら、私が電車まであと3メートル。

というところで電車はプシューと音を立ててドアを閉めた。

 

行ってしまった電車の後ろ姿を眺めていたら、怒りというより、焦りというより、なんだか少し哀しくなった。

「またかお前」

と100回くらい思った。

 

3分くらい立ち尽くした後、お腹が鳴って我に返った。
駅のホームにある立ち食い蕎麦を横目に、まずは腹ごしらえが大切なのではないかと思った。


そこで財布の中を見てみると、なんと3500円しか入っていなかった。

実は
私はまだ新潟大学前からここまでの料金の精算をすませていなかった。
しかも長野電鉄は私鉄なので、ICカードは使えない。現金で精算しなければいけない。


それは知っていたので、とりあえず精算してホームから出てから食について考えることにした。

 

改札横にあるこじんまりとした精算所の少し禿げ上がったおっちゃんが
「はいよ、」
と言って提示したここまでの運賃は3410円だった。
ICカードには3500円以上の金額が入っていたが、今は無用の長物だ。


恐る恐る財布から3500円を取り出す。


ひったくるように私の差し出したお金を受け取ったおっちゃんから返ってきたお釣りは、50円玉と10円玉数枚。


ここで、私の財布から50円以上の価値がある日本貨幣が消えた。
かろうじて、イギリスの2ペンスがあったが、ここは日本だからなんの役にもたたない。

これじゃ立ち食いの蕎麦さえも食べれないと思って、私はとても心細くなった。
その時点で私は、金なし携帯なしの悲しい人間だった。


おそらく、
あの場にいた日本人の中では一番絶望していたと思う。

 

しかし私は自分を奮い立たせて
まずは、落し物の連絡をしなければ。

と思い、鳴る腹を抱えて落し物センターを探した。

やっと見つけた忘れ物センターは
駅の下の影に忘れられたかのようにあった。

センターの係員さんは
「私鉄だから、長野駅に携帯が戻ってくることはまずないんだよねえ。とりあえず、少し時間が経ってからこの番号に連絡してみな」
と電話番号が書かれた小さな紙切れをくれた。
「ありがとうござます」
と言ってセンターをでた。


未だ金なし携帯なし帰る手立てもなし。
このままじゃ家に着く前に空腹で死んじまう。
実は私は、朝から何も食べてなかった。

 

さて、そこから駅ナカに戻ると
なんと駅ナカATMを発見した。
そりゃそうだよね。みんな私みたいにお金なくなるもんね。

ありがたやありがたやと思いつつ、カードを差し込む。
すると
「このカードは使えません」
と言われた。
再び絶望した。
でもふとカードを見てみると、私は楽天カードを間違えて差し込んでいた。


空腹で頭が少しやられてしまっていたらしい。
ゆうちょカードを探して再び差し込む。
すると
二万円を引き出すことが出来た。
ありがとうお金。ありがとうATM。
ありがとうATMを作ってくれた人。
さようなら手数料。

 

私は金を得て急に心が大きくなった。

なので
「さて、何を喰らうてやろうか」
と、駅ナカを巡回してみる事にした。

さすがは長野市

駅ナカには様々なものがあったが、

見回ってるうちに、
昔親しい人と長野駅に行った時に買ってもらった肉まんを久しぶりに食べたいと思った。

 

しかし行ってみると、一階のその場所にはもう、あの肉まんを売っているお店は無かった。


時間の流れを感じて、大きくなった心がまた萎んだ。

まあいいや。

と思い、立ち食いそばに向かった。
中に入ると、中年のおじさんが券売機の前で
「お先にどうぞ」と笑顔で言ってくれた。

 

しかし券売機は1000円以上の札を入れてくれないシステムだったので、万札しかない私には使えなかった。
その旨を店のおばちゃんにいうと、1万円を千円札にバラしてくれた。

人の優しさが目にしみた。
器を持ってかき揚げそばをかきこんだ。
思っていたよりも大きかったかき揚げがサクサクとして美味しかった。
70円でいなり寿司もつけてしまった。

蕎麦を食べて寿司も食べる。
日本に生まれてよかったと思った。

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「ごちそうさまでした」と笑顔で言って
店を出た。

 

公衆電話の前に行き、さっきもらった紙切れを取り出した。

時間はつぶした。

公衆電話に100円を投入して、紙切れに書かれた上田駅の番号に電話をかける。
「はい」と答えた上田駅の担当者に
どんな携帯をどの列車で忘れたのかをなるべく詳しく説明した。
すると、優しそうな相手の駅員さんは、
「わかりました。いつになるか分かりませんが、モノが見つかったらすぐに連絡します」
とまるでヤクの取引みたいなことを私に言って電話を切った。

 

やるだけの事はやった。

 

でも電車はまだ無かったので、
改札を出たところで座って、音楽を聴きながらぼーっとしていた。


すると急に目の前でイベントが始まって、人が集まり始めた。

それを横目で見ていたら、スタッフの優しそうなお兄さんに
「アンケートにご協力していただくと、ガラガラをする事ができます。いかがでか?」と話しかけられた。

 

アンケートには長野県のどこに観光しに行くか、どこ出身かなどを書き込んだ。
私は長野県出身であることを偽って、岐阜県出身という事にして書いてみた。

 

散々な事があった後だ。
きっと神様も私に味方してくれるに違いない。

私はそんな根拠もない自信と、嘘を書いたアンケートを携えてガラガラの前に向かった。

 

1等は温泉旅行
2等は米
3等は特産品セットおよび蕎麦
4等以下 ウェットティッシュ


ガラガラに触れると、綺麗なお姉さんが
「ゆっくり回してくださいね〜」と補助してくれた。

さて、
何が出るか…。

ドキドキしながら抽選に挑む。

 

コロンと落ちたのは
白。
綺麗に白だった。

 

「四等ですね〜」と言われ、
特にいらぬウェットティッシュと、長野県について色々書いてある分厚いガイドブックなどが入っているビニール袋をもらった。

 

くっそう。
荷物が増えただけだった。。

神も仏もいない!!!!

 

そう思っていたら、
後ろでガランガランと鐘が鳴る。
私の次のおばさんが2等を当てていた。

 

ねえねえ神様、ちょっとタイミングずれちゃいませんか?
当てる人間違えちゃいませんか?

 

いや、神に祈った私が悪かったのか。
仏教徒だから仏に祈るべきだったのか。


そんなことを思いながら
とぼとぼ松本行きの電車に乗り込んだ。


そんな八月の昼下がりだった。

 

 

 

さて蛇足だが、
南木曽駅に着いて、公衆電話で家に電話をかけたら、母親に開口一番
「このどあほ!開いた口が塞がらんわ」
と、言われた。
駅から自宅の方に連絡があったらしい。
私の携帯は無事だった。
3日後くらいに着払いで我が家に届くそうだ。
ごめんなさい両親。そして駅員さん。

 

いやでも

 

田舎の綺麗な空気を吸いながら、日本はやっぱいい国だななんて思った。